徒手を使った心理面へのアプローチ方法

徒手療法

今回は心理面に対しての徒手的アプローチについて紹介したいと思います。

 

 

徒手でのアプローチは基本的には身体に変化を起こすために使われると思いますが、考え方によっては心理面に対する介入も可能です。

 

 

心と身体は密接に関係している

「あの人の動きの問題は心理的要因が強いからねー」

 

 

こんなセリフを聞いたことがないでしょうか?

 

 

身体機能面にあまり問題が見当たらないのに、なぜか痛みがあったり、動きにくかったりする方を見るとどうしても「機能面に問題がない=心理的(いわゆるメンタル)の問題」となり

 

 

「あとはどんどん動いて慣れましょう!」

と指導してしまいがちになります。

 

 

でも本当にそれだけでしょうか?

 

 

 

仮に、本当に心理的要因が大きいとしても我々が介入できることは動作の反復練習だけなんでしょうか?

 

 

僕は違うと思います。

 

 

それはその心理的要因を決定しているのは、動きそのものであることも多いからです。

 

 

僕自身も以前までは、身体面と心理面を分けて考えていました。

 

 

ですが、ある書籍を読んでその考えが変わって来ました。

 

 

それが春木豊先生の書いたこちらの本

 

こちらに書かれている「身体心理学」の考え方を見たときに、身体面と心理面は分けて考えるのではなく、一つのものとして動きを捉えていくことが大切であると感じました。

 

 

こちらの書籍には、動きが与える心理的な変化など色々な実験結果なども交えつつ紹介されています。

 

 

身体面と心理面を同じ一つのものとして考えると、先ほどのような「心理的な要因で動きにくい人や痛みが出てしまう人」に対しても僕たちができることはまだあるんじゃないかな?と思うようになりました。

 

 

身体心理学を用いてアプローチしていく

身体面から心理面に対しても変化を起こしていくためには、まず身体面のどのような反応が心理面と関係しているのかを知らないといけません。

 

 

身体心理学では身体には大きく分けて3つの反応があるとされています。

それは

  • レスポンデント反応:生理的反射
  • オペラント反応:意図的反応
  • レスぺラント反応:反射と意図的の両方を含むもの

 

 

以前はスキナーの提唱する2つの反応だけだったのですが、春木先生の書籍で新たにレスペラント反応が追加された形になっています。

 

 

心理的な部分に対してアプローチしていく上で重要になるのが、レスペラント反応です。

 

レスペラント反応とは

レスペラント反応とは、意識的にでもあり、生理的な反射でもある反応のことを言います。

 

 

ではなぜこのレスペラント反応が重要なのか?

 

それはこのレスペラント反応が意識的(心の部分)と生理的(身体の部分)の両方の性質を持っているからです。

 

 

つまりこのレスペラント反応を変化させることで、心と身体の両方に変化を起こすことができるのではないかと考えます。

 

 

呼吸運動で例えると、

例えば、自身の心を落ち着けたいときなどは意識的に深呼吸をしたりして、呼吸の回数を調整するといったことをしていると思います。

 

 

逆に試合直前、今から戦うぞ!っというときはわざと呼吸を荒げたり、大きな声を出すことで自らを奮い立たせたりしているわけです。

 

これも一つの身体面から心理面に対してのアプローチであると言えます。

身体面からのアプローチが心理面に働いた例 〜膝の痛みの恐怖心への介入〜

身体機能的な部分に対してのみではなく、その人の不安感や恐怖心などが軽減されることで動作が変化することは結構あると思います。

 

 

僕の経験した人では、

膝を曲げるのが痛くてしょうがない人がいて、痛くなるのが怖くて常に力が入っている。

動くとき肩で息をしていて、立ち座りの時なんかは息を堪えるようにして立ち上がったり座ったりしている人がいました。

 

 

変形性膝関節症も何十年も前から言われているそうで、常に痛みと一緒に生きて来ましたとおっしゃっていました。

 

 

その方に対してはもちろん、膝関節にかかるストレスや疼痛が和らぐようなアプローチを行い、痛み自体は膝関節だけの自動運動や他動運動ではかなり軽減しました。

 

 

ですが

立ち座りなどの立ちあがる動作や立位での動作のときの、呼吸パターンは残っていて、

「痛みはあまりないんだけどやっぱり動かすのは怖いね」

という感じでした。

 

 

その方に対して、努力性の呼吸が楽になるように肩周辺の組織のリラクゼーションやタッチングなどを行い呼吸パターンを修正するようにしながら動作をしていただくと、先ほどのような息こらえなどが軽減して、少し動作の努力性が軽減しました。

 

 

このときはあまり深くは考えていなかったのですが、今思えばこのような介入も心理面に対してのアプローチになっているのかな?と思います。

 

 

この方の場合、痛みがあるのは膝だったんですが、「動くときの恐怖心」や「痛みが出るかもしればい不安」に対してのアプローチは膝ではなく、呼吸に対するアプローチの方が良い反応が出ました。

 

 

一見すると関係のないようなところも、心理面に対するアプローチを含めていくと意外と関係していることがあるということなのかなと思います。

 

心理面による身体面への影響〜呼吸〜

ここからは各論的により詳しくお話ししていきます。

 

ここでは呼吸を取り上げてお話ししてきます。

 

武術でもヨガなどのボディーワークでも「呼吸法」と言われるものがあり、リハビリ以外の分野においても、呼吸を重要視することは非常に多いとされています。

 

リハビリで「呼吸」と言われると、「呼吸器リハビリ」をイメージしてしまいますが、呼吸器疾患のない方に対しても呼吸を見ていくことは非常に重要であると思います。

 

 

リハビリをしていてこんな方いませんか?

 

 

「動作中に、息を止めてしまって動作後に息切れが起こったりする人」

「動作中に肩で息をしていて見るからにしんどそうな人」

 

 

呼吸器の疾患がある方は、呼吸器による影響で起きている可能性もありますが、そのような疾患が無いにも関わらず、呼吸が努力的になっている、もしくは呼吸数が増えている方もおられます。

 

 

その場合、患部だけのアプローチでは動作が変化しない。もしくは変化しても自覚しにくい場合があるかもしれません。

 

 

書籍にも記されていますが、呼吸反応と生理現象や心理現象は相互に関係すると言われています。

以下引用

呼吸反応をすることで、それによって生ずる感覚や気分があり、その心理状態が逆に呼吸反応をかえ、生理状態にも影響する。

同じように生理状態が呼吸反応に影響することもあるだろう。

たとえばストレスが続くと、振幅の小さい浅い呼吸になりがちである。このような反応は息苦しさの感覚や緊張感を生ずることになる。これは別の言い方をすれば、ストレスという状況が心理的な緊張を生じ、それが呼吸を浅くし、その結果生理状態にも影響するということである。

引用:動きが心をつくる──身体心理学への招待 春木 豊

 

呼吸を整えることで心理面にアプローチできるか?

なぜ呼吸から心理面へのアプローチができるのかについては、先程紹介した「レスペラント反応」がキーポイントになっています。

 

 

呼吸でいうと、呼吸運動自体は自律神経を介して、無意識下で調整されています。

そのため私たちは、寝ているときや何も考えていないときでも勝手に呼吸をしています。

この呼吸を調整する機能は、橋・延髄にある「呼吸中枢」と言われる部位に存在しており、血中の二酸化炭素の濃度や、PHなどの要因によって自動的に調整されていると言われています。

 

 

主に内臓の運動は自律神経のみでコントロールされていることが多いのですが、呼吸の際に働く横隔膜と言われる筋肉は、ほかの内臓の筋肉と違い横紋筋で構成されており、体性神経支配であることから、意識的も調整が可能という点です。

 

 

つまり呼気は意図的に行うこともできるということです。

 

 

そして意識的に調整した呼気でも心理状態や生理状態に影響を与える事ができます

 

 

たとえば意識的にゆっくりした呼吸、特に呼気を意識することで、副交感神経を優位にすることができる。

 

 

そして副交感神経とは、リラックスするときに優位になる神経であり、交感神経とは相反抑制の関係にあります。

 

 

なので、恐怖心や痛みによって交感神経が優位になっている場合でも、呼気を意識する事で恐怖心なども落ち着く可能性があります

 

 

心が呼吸に与える影響

呼吸が心に影響を与えることもありますが、逆に心が呼吸に影響を与えている場合ももちろんあります。

 

このことは身体的所見から心の状態を評価する上でも重要なことです。

 

動作中や動作後の呼吸状態は、心肺機能的な持久性を評価する上でも重要だと思いますが、

心理的な要因を評価していく上でも必要なことです。

 

 

書籍でも実験を交えて紹介されています。

簡単に説明すると被験者にストレスとなる作業をしてもらい、その時の呼吸状態を確認するというものでした。

 

 

結果としては、ストレス状況に置かれることで、呼気後のポーズ時間が短くなる事がみられたとされています。

ポーズ時間とは呼気と吸気の間の間隔のことです。

 

ストレスが加わった状態、心理的に負荷がかかっている状態では、この間が短くなるため呼吸数が増加し結果として息が荒くなったり、呼吸数が増えることで呼吸補助筋も過活動になってしまうため、いわゆる肩で息をする状態になってしまうと思います。

 

 

このことから、逆に緊張状態の時に落ち着きを取り戻したいときは、呼気の後のポーズ時間を長めに取るように意識することが大切であると紹介されています。

 

 

長い呼気は血圧も下げる!?

次は呼吸が生理的な要素にどのような影響を与えているのかの紹介です。

 

こちらも書籍で紹介されている実験では、短息と長息、ただの深呼吸でのバイタルや心理テストの変化を測定したものが紹介されています。

 

結果としては、どの方法でも血圧は下がりましたが、長息がもっとも下がり方が大きい事がわかりました。

 

 

二点閾値を検査した実験では、ゆっくりとした呼気と通常の呼吸をした群は、呼吸を、意識的に行わなかった群はとくらべて閾値の低下がみられたとの報告があります。

つまり呼気をした群の方が、よく感覚がわかるようになったということです。

 

 

二点識別覚は筋弛緩が生ずると、よりわかりやすくなるといわれているので、このことからも呼吸と筋緊張は関連していることがわかります。

 

 

この実験の重要な部分としては、この二点識別覚の閾値が低下してのは、通常の呼吸でも起こったということです。

 

運動中に息を止めてしまいやすい人は、ただ苦しいだけでなく、筋弛緩が十分に行えないため感覚入力も入りにくい状況になることが予想されます。

 

そのため、ストレスが加わる状況の時は呼吸を止めないで動く状況を作れることが重要になってくると思います。

 

呼吸が心理に与える影響

筆者らの実験によると、丹田呼吸法を用いた実験で、長息は短息や深呼吸と比較して落ち着いた気分になる傾向が大きかったとの事です。

 

 

呼吸運動において、呼気は副交感神経が優位になるとされているため、長息がよりリラックス効果が高かったということだと思います。

 

 

これを臨床で生かしていくためには動作において、心理面的な要素(恐怖心や不安感など)が関与していそうな場合、

 

  • 長く呼気が作れるようになること
  • 呼吸数がなるべく増加しないようにすること

 

が安心して動くために必要な要素であると考えます。

 

 

呼吸に対する徒手的なアプローチ方法

先にも書きましたように、心理面に対してアプローチしていくために、まずは呼吸を変えてみる事が大事なんです。

 

ですが、

緊張状態が慢性化しているような場合、自分の意識だけでは、上手く呼吸を調整できないことも多くあると思います。

 

腹式呼吸や呼気を長くするために口すぼめ呼吸なんかを指導したりするんですが、高齢者によってはなかなか上手くできない方も多いように思います。

逆に呼吸法を指導した後の方が、努力的な呼吸になって逆効果だったりもします、、、

 

 

そのような場合は、やはり徒手による介入も必要になってくると思います。

 

呼吸が速く浅い場合、呼吸補助筋が過剰に収縮している可能性がある

例えば僧帽筋の上部繊維や胸鎖乳突筋など、呼吸補助筋と言われている筋が過剰収縮していると、吸気で十分な空気が肺に送られておらず、息苦しさを感じたり。

腹式呼吸と胸式呼吸を比較すると腹式呼吸の方がたくさんの空気が入るらしいです。

 

補助筋が優位に活動することによって努力的な呼吸になり、それが呼吸困難感を生じさせていたりする場合もあります。

 

 

これらの筋をリリースして呼吸を深く吸えるようにすれば、努力的な呼吸が軽減し呼吸困難感が軽減することで、副交感神経を優位に働かせやすくなります。

結果として呼気も延長され、リラックスした呼吸ができるようになると思います。

 

胸郭の可動性を確認する

他のポイントとしては、肺に十分な空気が入るためには、胸郭の可動性が重要になってくると思います。

ちなみに胸郭は上は斜角筋、下は腰方形筋によって吊るされたような状態になっています。

 

そのため上記の2つの筋をリリースすることで、胸郭の可動性を出して呼吸が楽に行えるようにしていきます。

別の方法で胸郭に対してアプローチする場合、肩甲骨の位置を修正することで、周囲の緊張を調整して胸郭の可動性を出したりする場合もあります。

 

 

最後に

心理面に対するアプローチと考えると「カウンセリング」のような話をしたり、聞いたりすることを中心に考えることが多いです。

 

 

もちろん心理面に対して、例えばその人の話を傾聴して不安や不満を聞いたりすることで解消されることも多いにあると思います。

 

 

じゃあ話だけ聞いていればいいのか?といえばそれも違うと思っていて、その一つの可能性がこの身体心理学的なアプローチであると思います。

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