回復期で担当することの多い、術後のリハビリテーションについて

リハビリ関連
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今回は回復期で担当することの多い、股関節周囲の疾患に対する術後のリハビリテーションについて書いて見ました。

全人工股関節置換術と人工骨頭置換術との違い

名前だけで見るとなんか同じようなこと書いてあるみたいになっちゃいましたけど、実際は別物です。

 

全人工股関節置換術(THA)とは

変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などにより変形した関節を、金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工股関節に入れ替えることで痛みがなくなり、短縮した下肢を1-2cm程度長くすることが可能で、歩行能力が改善されます。患者さんの年齢や骨の形状、質によって、骨セメントを用いる場合とセメントを使用せずに直接骨に固定する場合とがあります。

引用:http://www.kansetsu-itai.com/about/hip/artificial/kind/kin002.php

個人的な意見ですが、回復期で遭遇するTHAの患者さんは変形性股関節症の術後である事が多い印象です。

 

人工骨頭置換術(BHA)とは

 

人工骨頭置換術(BHA)は、大腿骨頚部内側骨折や大腿骨頭が何らかの原因で壊死を起こした場合に、大腿骨頭を切除し、金属あるいはセラミックでできた骨頭で置換する手術です。

全人工股関節置換術(THA)と違い、臼蓋側は置換せず、患者さん自身の軟骨と摺動(擦り合い)させます。患者さんの年齢や骨の形状、質によって、骨セメントを用いる場合と、セメントを使用せずに直接骨に固定する場合があります。

引用:http://www.kansetsu-itai.com/about/hip/artificial/kind/kin003.php

主に大腿骨頸部骨折の患者さんがこの術後で入院されて来ています。

 

2つの術式の背景にある疾患の違い

この2つの術式の背景にある疾患は異なっていて、THAの場合は主に変形性の関節症に適応される事が多いです。そのため疾患としては慢性疾患である事が多いと思います。またBHAは骨折に適応がされるので、主に急性疾患(怪我など)であると思います。

 

同じような術式なのにも関わらず、対象となる疾患は慢性疾患と急性疾患で真逆の疾患が対象になります。

 

ということは、当然リハビリテーションのアプローチの方法も異なってくることは想像できると思います。

 

急性期では基本的に炎症期である事が多いので、術後のリハビリテーションは大きく変わらない事があるのかなと思いますが、回復期のようにガシガシ動いていかなければならない場合はこの疾患ごとの特徴を考えなければならないと思います。

 

変形性股関節症と大腿骨頸部骨折でのアプローチ方法の違い

変形性股関節症の場合

変形性股関節症に限らず、変形性の関節症の特徴は痛みを出している関節だけが異常を起こしているわけではなく、その他の関節の異常を代償しあった結果生じているという事だと思います。加えて変形性の関節症の方は基本的に「痛い=手術」とはすぐにはならないと思います。そのため、痛みを我慢しながら日常生活を送って来たという生活背景があることを念頭に入れておく必要があると思います。

 

問診で痛みを聴くときは「痛みが出てからどのくらいで手術を希望したのか」なども加えて見ると元が同程度重度だったのかを予想する指標にもなります。

術前のレントゲン写真を見ることで変形の程度がどの程度であったのか、ということは評価する事ができます。ですが注意しなければいけないのが、「変形が強い=痛みが強い」ではないので、痛みの程度は直接本人に確認する方が良いと思います。

参考

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重症度も痛みを我慢していた期間が長ければ重症とは一概には言えないのですが、やはり痛みを我慢している期間が長いと防御性収縮が出現している期間も長くなりますし、代償動作でその他の関節や筋の過剰使用も起こってくるので、重要であると思います。

 

 

アプローチ方法は簡単にいうと、症状が出ている関節以外の関節の異常も確認しながら過剰使用している部位を「楽」にして、本来使いやすい使い方を指導していくことになります。

 

大腿骨頸部骨折の場合

大腿骨頸部骨折の場合は、主な受傷原因は「転倒」である事が多いと思います。

 

よく聴くのが、ベッドや椅子に座ろうとしたら滑り落ちたとか、床に敷いていあったカーペットに躓いたなどが多い印象です。

 

変形性の関節症と異なり、元々痛みが無かった部分が骨折により痛みが出現するので、術後痛みさえ取れてしまえば、防御性収縮や代償動作などは少ない印象です。

 

この疾患の方のアプローチにおいて、「転倒に至った背景を評価する事が重要」であると思います。

例えば、眠剤を服用している事で夜間のトイレで転倒したケースであれば、アプローチのポイントとしては身体機能の改善に加えて、服薬調整の必要があります。その他の例でいうと、元々食事の支度が大変になっていて、それが原因で低栄養が進み徐々に筋力が低下していって転倒に至った場合は、低栄養の改善と退院後の食事の提供元を確保する必要があると思います。

 

当たり前のことではありますが、入院前の生活状況をより詳しく確認していく事が重要になってきます。

 

各疾患の個人的な介入方法

私は普段からトリガーポイントと骨盤調整、アナトミー・トレイン・経絡など組み合わせながら臨床を実施しています。

 

そのあたりの観点から自分のしていることを簡単にですが、紹介してみたいと思います。

 

共通していること

2つの疾患に共通していることは術後であるため、術創部の疼痛と腫脹に留意しなければならないというところです。

 

基本的に術後の患者さんは術前に訴えていた痛みは軽減している事が多いです。しかし術後の疼痛や腫脹に関しては、ほぼ確実に出現しているのでその痛みを増強させないようにアプローチをしていかないと、私たちの介入によって余計な痛みを引き起こす可能性があります。

 

動きに関していうと、当たり前ではありますが当然股関節の手術をされているので、股関節の動かし方がまだよくわかっていない事が多いです。変形と骨折で少し特徴が異なっているような印象はありますが、まずは股関節の動きをよくしていく、特に荷重時の時の動きを促していく事が重要であると思います。

 

骨折の場合は、術後に骨折部の痛みを訴えることはあまりないと思うので術創部の痛みに留意しながら、代償動作・その他の筋の過剰使用が起こらないように運動指導をしていく事が重要であると思います。

THAの患者さんへのアプローチ

過剰使用している筋をリリースする

股関節の動きを促していく時に変形性股関節症の患者さんの場合は、股関節の動きを他の関節が代用していたり、股関節を動かす筋(腸腰筋や大臀筋など)の代わりに他の筋の過剰使用が見られる事が多い印象です。

 

今まで痛みを我慢していたため、どうやったら痛みが軽減するのかをその人なりに考えた結果だと思います。

 

代償的に筋が過剰使用していると、本来使わなければならない筋が収縮しにくい状態になってしまうので、まずはこの過剰使用している筋をリリースする事から始めていきます。

 

股関節の動きを代償する筋で代表的なものは大腿直筋が多い印象ですね。

そのほかにも股関節周囲の過剰使用している筋は多いです。

こちらの記事に股関節周囲の筋のリリース方法を載せていますので合わせて読んで見てください。

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筋だけを特定しようとしてもなかなかわからない場合は、立位の姿勢を見たり、荷重時の下肢の動きでどこが過剰使用しているかを確認したりします。

荷重下の方が他の関節との関係がわかりやすくなるため、立位が取れる方であれば、立位姿勢の分析をはじめにしておくことをお勧めします。その際できれば立位は上肢の支えが無い状態がより詳細に分析できます。

参考

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荷重下では主に膝関節や腰椎での動きで股関節の動きを代償していることが多いと思います。

運動指導のポイント

先に見つけた過剰使用している筋や代償している関節の動きを抑制しながら運動をしていく事が重要になると思います。

 

変形性股関節症の患者さんの場合、ハムストリングスや大臀筋などの股関節の伸筋の働きが不十分になりやすく、膝関節や腰椎で代償してしまう事が多いので、荷重下で股関節の伸展を促していく事が重要であると感じています。

 

個人的によく行う股関節の伸展を促す方法は

  1. 荷重位置の修正
  2. 段差の利用

が多いです。

荷重位置の修正としては、よくある荷重位置の異常として、前足部への荷重が強い場合が多いです。そのため荷重位置を脛骨直下へ修正していくようにします。

参照

「楽」な姿勢の作り方
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段差の利用としては、10cm程度の段差を使用して段差昇降を行います。この時に注意が必要なのが、膝を過剰使用させない事です。そのためには図のように下腿をまっすぐにした状態を保ちつつ、下腿の上に身体を乗せていくイメージで行うと良いと思います。

 

BHAの患者さんのアプローチ

痛みを増強させない動き方の指導

骨折の場合は受賞前まで痛みがなかったわけなので、痛みを我慢していたという事がないですが、代わりに急激に痛みが出現していたため、防御性収縮が出現し受傷した部位を極力動かさないようにしようとする反応が起こります。

 

骨折の痛みは取れているのに、受傷した時の恐怖心や防御性収縮による痛みが残存している事が多いため、まずは痛みのない範囲で動けるよっていうことを指導していく必要があります。

 

また痛みは長引くと慢性化してしまうこともあるので早めに対応してく事が重要であると思います。

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 股関節周囲の支持性の向上

受傷後の股関節は術後の影響もあり、股関節周囲の筋出力が低下している事が多く見られます。

歩行時の特徴などでも立脚中期に骨盤が後方回旋し荷重がうまく乗らないことも多く見られます。

 

歩行時に股関節の安定化を図る筋は

  • 中臀筋・小臀筋といった股関節の外転筋
  • 梨状筋をはじめとする深層外旋六筋

などが挙げられます。

 

 

この筋にトリガーポイントが形成されると、痛みの他にも収縮効率の低下から、筋出力の低下を起こすこともあります。

 

さらに上記の筋は術中に剥離したり、一部切除したりとしている可能性もあるので特に注意深く評価していく必要があると思います。

 

そのためまずこの筋のトリガーポイントをリリースする事と、しっかり収縮させていく事で股関節周囲の安定化を図っていく事が重要だと思います。

 

その他にも、痛みがあると胸式呼吸が優位になり、上部体幹の過剰使用により下部体幹(腹横筋・腹斜筋・骨盤底筋群など)の収縮が不十分になりやすいことも経験します。

 

股関節の動きは骨盤の動きと連動しているため、骨盤の評価も行なっていくことも必要であると思います。

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最後に

最後に書いたアプローチは自分がやっていることをただ書いただけなので、もっと深く考えている方からしたらありふれた内容であるとは思います。

 

まだ臨床経験の少ない新人セラピストはもしよければ参考にしていただいて、臨床に生かしていただけたらと思います。

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