関節可動域訓練が楽になる4つのポイント

リハビリ関連

今回は関節可動域訓練でセラピストも患者さんも「楽」になるためのポイントを紹介したいと思います!

 

このポイントを知っているかどうかで、アプローチの効果も変わってきますので是非参考にして見て下さい。

可動域に対しての介入とは?

可動域に対しての介入には大きく2つあります。

1つ目は関節可動域を拡大させるための介入、2つ目は関節可動域を維持するための介入です。

 

1つ目の介入は、身体機能が改善していく急性期や回復期と一部生活期の患者さん、利用者さんが対象になります。読んで字のごとく、目標となる動作や行為を成立させるため、その動作に必要となる関節の可動域を拡大させていくことです。

 

2つ目の介入は主に生活期、または進行性の疾患の方に対して、現在の生活や動作レベルを続けていくために、今ある可動域を維持していくために行うと思います。

 

急性期、回復期、生活期と言うのは、病院側が決めている基準です。そのため、「生活期だから機能を維持していく」みたいな考え方は、個人的には好きではありません。時期に関係なく、その人が今よりもっと良くありたいと思っているのであれば、いつでも回復期であると思います。
なので実際は関節可動域を拡大する訓練なのか、維持していく訓練なのかをプログラムを提供する側は考えていなければならないと思います。
用語に対する注意というよりかは、実施する側の意識の問題ですね。

 

関節可動域訓練って難しいの?

拡大するにしても維持するにしても関節可動域訓練って難しいの?ってことなんですけど、、、。

 

別にそんなに難しくないです

 

 

しかし

 

 

奥が深いと思っています。

 

 

みなさんも経験があるかもしれませんが、自分が測った関節可動域の角度と先輩セラピストが測った角度では明らかに先輩が測ったほうが可動域が大きい経験はないでしょうか?

 

 

私は就職して1年目の時に先輩の代行で変形膝関節症で人工膝関節置換術(TKA)をされた方のリハビリをさせていただいたことがありました。

 

 

その時先輩からは、

 

 

「座位で110度くらいまでは曲がるしよろしく!」

 

 

と言われていたんですが、

 

 

「いくらやっても100°までしか曲がらないんですけど〜」

 

ということがありました。

 

 

ただの関節可動域訓練なのですが、それを実施する側の力量で結果が異なる場合があるのです。

 

力量といっても単純に「経験」と片付けてしまっては新人や、ましては患者さん・家族の方が行う場合はどうしようもないことになってしまいます。

 

ここでは私の経験や色々な先輩たちに指導して頂いたことを噛み砕いてご紹介していきたいと思います。

 

関節可動域訓練での一工夫 〜テクニック云々よりまずは気持ち〜

関節可動域訓練を行う時に、いきなり相手の身体を触っていないでしょうか?相手に触れるということは一見病院スタッフからしてみたらなんら不思議なことでは無いと感じるかもしれません。

ですが、よく考えてみてください。

 

病院じゃ無いところで急に相手の身体を触ったりなんかしたら、

 

痴漢容疑で捕まりますよ!!(笑

 

 

まぁこれは極端な例だとしても患者さん、特に術後早期の痛みが強い方の場合や、脳卒中の片麻痺で麻痺側の上下肢に関してとても敏感になっておられる方などの場合、その気にしている部分をいきなり触ろうとしようもんならすごいびっくりしてしまい、防御性の緊張が上がりやすくなってしまいます。

 

何より、

 

「この人は痛いことをするんじゃないだろうか?」

 

みたいに相手側に不信感を持たれたら、関節可動域訓練どころかリハビリそのものがうまく進まなくなる可能性すらあります。

 

 

まずは相手を思いやる気持ちを持って接していくという前提があって、その上でまず相手側に触れる前に相手との間合いをつかむことが大切であると思います。

 

 

相手との距離感〜パーソナルスペースから考える〜

 

パーソナルスペースとは

パーソナルスペース(英:personal-space)とは、他人に近付かれると不快に感じる空間のことで、パーソナルエリア、対人距離とも呼ばれる。 一般に女性よりも男性の方がこの空間は広いとされているが、社会文化や民族、個人の性格やその相手によっても差がある。

引用:wikipedia

 

要は人それぞれ入られたら嫌な距離があるということで、それは人によって異なりますよってことです。

 

基本的には相手側を女性だとすると、こちらが男性である場合はパーソナルスペースが広く、女性であれば比較的少ない。相手側が男性だとするとこちら側は女性の方が男性よりパーソナルスペースが狭くなるといわれています。

 

 

このことからもわかるように、

 

 

セラピストが男性であるというだけで、すでにパーソナルスペースが広い状態を作りやすいということです。

 

 

もちろん性差だけではなく、文化的な違いであったり、その人が受けた教育によっても変化するしもちろんその人自身の性格にも関与するので一概には言えません。

 

 

しかし、このことを少し意識しておくだけでも、特に男性は相手に近づく際は一言かけてから近づいたり、触れたりするという風にするだけで相手側の緊張の程度が変わってくると思います。

 

パーソナルスペースは親密な関係(=仲良くなってくる)と徐々に狭くなるため、介入していく中で、介入の最初の頃に気をつけておけば、その後の介入がスムーズになるのではないでしょうか。

 

関節可動域訓練での一工夫 〜優しく触るっとどういうこと?〜

距離感がわかってきたら、そこから実際に触れていくわけですが、触り方もとても大切になってきます。

 

一言で言うと、

 

 

優しく触って下さい

 

 

と言うことなんですけど。

 

 

それじゃ全然意味わかんないので、もう少し具体的にしていきましょう。

 

 

人には触り方によって、自律神経の興奮の仕方が変わります。

 

 

この時の触り方と言うのは、触る速さのことです。

 

 

人は皮膚に触れる速度が5cm/秒である時に一番C繊維が興奮すると言われています。

 

C繊維とは

神経線維の種類の一つ。細く無髄で伝達速度が遅い。感覚神経、および自律神経の節後線維を構成する。

[補説]神経線維は刺激の伝達速度によってA線維・B線維・C線維に分類される。A線維は有髄で最も太く伝達速度が速く、体性神経(感覚神経と運動神経)を構成する。B線維も有髄で、C繊維より太く伝達速度が速く、自律神経の節前線維を構成している。

 

 

このC繊維が興奮することで、副交感神経が優位になり、相手側を「リラックス」させることができるため、余計な筋緊張を生じさせることなく訓練をすることができます。

 

関節可動域訓練での一工夫〜触る場所を意識しよう〜

触り方まで意識できてきたので、次は触る場所も意識したいですね。

 

 

触る場所なんですが、

 

各分節の質量中心を意識して触るといいと思います。

 

質量中心に関しては以前にも書いているのでそちらをどうぞ

動作分析を「楽」にする知識
今回は動作観察についての話です。 動作分析、、、。 みなさんも日頃の臨床でやってないなんてことはまずないと思いますが、難しいですよね。 特に新人の時や学生時代なんかは 何から見ていいか...

 

 

下肢を例にすると下図のあたりを触るとちょうどいいのではないでしょうか。

 

この質量中心を意識して触るようにすることで、その分節の回転モーメントが生じにくくなるので相手側の必要最低限の筋活動が少なくてすみます。

 

関節可動域訓練の工夫〜動かし方〜

最後に動かし方の紹介です。

 

 

関節可動域訓練において意識しておきたいポイントとしては、「人を動かしている」と言う感覚を持つと言うことです。

 

 

人の動きの特徴として、必ず複数の関節が協調的に動いていると言うことが挙げられます。

 

 

例えば、肩関節を屈曲させる時は主に動いているのは肩甲上腕関節と言われる、いわゆる肩関節と言われる部分です。

 

 

ですがこれ以外にも、肩甲胸郭関節や胸鎖関節、肩鎖関節などと言った広義の意味での肩関節と言われる部分も同時に動いています。

 

 

それだけではありません。

 

実際には肩関節を屈曲させる際には胸椎の伸展も同時に行なっています。

試しに、胸椎をわざと屈曲している状態で肩関節を屈曲させるとかなり挙げにくいことがわかると思います。逆に胸椎を伸展させながら肩関節を屈曲させると、先ほどと比べてかなり挙げやすくなっていると思います。

 

 

肩関節が動く際に、胸椎の動きが同時に起こっているとすれば、胸椎と同様に脊柱を構成している、腰椎や頸椎も必ず動いていますし、腰椎が動いていれば骨盤や股関節の動きにも影響が出ていると思います。

 

 

と言うことは膝や足も、、、

 

 

と言った具合に言い出したらキリがないほど、本当に様々な関節が連動して動いているわけです。

 

 

関節の動きの基本は円運動!、、、だけど

関節には球関節や蝶番関節など、いろいろな形のものが存在しています。

 

 

ですが、関節の動きの基本はあくまでも円運動です。

 

 

つまり、関節という動きの軸に対して遠位にある骨が円を描くように動きます。

実際には、その都度回転の中心軸というのは変化しているので、正確な円を描くわけではありませんが、、、

 

このことは、皆さんも何と無く気づいていると思います。

実際に関節を動かす際には凹凸の法則を意識して動かすことが基本になります。

 

 

凹凸の法則に従って動かす際、円運動を意識しながら動かす方が良いと思います。

 

 

ですがそれは単一の関節を動かすときのみ成立する話です。

 

 

先ほども言いましたが、人は動く時には必ず複数の関節を同時に動かしています。

さらに言えば、目的のある動作を行う場合、各関節がバラバラに円運動なんかしてたら非常に効率の悪い動き方になってしまうことが想像されます。

 

 

例えば、上肢のリーチング課題なんかが典型的な例であると思います。

 

 

リーチング課題とは、目標物に向かって手を伸ばしてその目標物を掴む、もしくは目標の場所に持っているものを置くような課題のことです。

 

 

リーチングをする際は、単純に肩関節が屈曲するだけでなく肘関節が伸展したり、手関節は背屈したりとその状況に応じて臨機応変に関節を動かす必要があります。

今回の例では脊柱や下肢の動きは割愛しています

 

 

これがもし、肩関節と肘関節、手関節がそれぞれバラバラに動いてしまうとどうなるのか?

関節は基本的に円運動になるので、先に肩が屈曲してそのあとに肘が伸展して、、、

想像しただけでめちゃめちゃ効率悪いですよね(汗

 

 

 

上肢のリーチングは、本来目標物にあるいは目標の場所に向かって一直線に手が伸びるものです。

だけど、関節は円運動しかしないからどうやって一直線に動いているんでしょうか?

 

 

一直線の動きは、各関節の運動のベクトルの合成によって生み出されています。

 

 

井桁崩しの原理=ベクトルの合成で動くこと

井桁崩しの原理とは、武術研究家の甲野善紀氏が提唱したとされる運動原理のことです。

井桁とは平行四辺形のことです

 

人は体を動かす際には、各関節が協調的に動いています。

 

 

それぞれの関節は円運動をしますので、運動のベクトルがあっちに行ったり、こっちに行ったりとバラバラに向いています。

 

 

この状態だと一見、目的の動作を行う時に使用する関節が多いとそれだけ動きにくくなってしまうように感じます。

確かに運動に必要な関節の数は少ない方が、コントロールは容易になります。

実際僕たちが子供や赤ちゃんの時は、あえて動く関節を制限することでコントロールする難易度を下げると行った戦略を取ります。ですが、関節の数が少なくなると詳細な動きが困難になるので、大人になるにつれてコントロールする関節を増やしていくようになります。

 

 

複数の関節が同時に動くような課題の場合、その関節の運動ベクトルを合成することで、一直線の動き(最短距離の動き)が可能になるということです。

 

 

ベクトルの合成とは、図のようにAとBという運動のベクトルがあるとしたら、その二辺を使って平行四辺形を作るようにします。

その運動の開始点の対側に向かって直線を伸ばすと、AとBの二つのベクトルが合成されてCというベクトルが生じます。

 

人の身体で起こっている運動もこういうことが生じていると考えられます。

リーチング動作を例に見てみると、単純化させると肩関節・肘関節・手関節がそれぞれ一方向に動いているとすると、それぞれの運動ベクトルが合成されて、目標物に向かってまっすぐ伸びているわけです。

 

関節を動かす時に井桁崩しを意識して動かしてみよう!

身体を動かすことは、複数のベクトルの合成によって決まるということなので、関節を動かす場合は、井桁崩しの原理を意識しながら動かすことで「楽」に動かすことができます。

 

 

方法としては他動的に動かす場合、先ほどのCのベクトルを再現しながら動かしていきます。

 

 

触れる場所に関しては、身体質量中心を把持していくことが重要になります。

 

 

この質量中心が一直線上に動くように動かすことで、複数の関節がそれぞれのベクトルで動いていたとしても、その合成ベクトルで動かすことができるため自分も相手もかなり「楽」に関節を動かすことができます。

 

最後に

関節可動域訓練と一言で言っても、こうやって考えてみるとかなり意識するポイントがあるなと思います。

 

 

「楽」に動かせることで、相手側の防御性収縮なども少なくなるため関節や筋に対して適切な感覚入力が可能になります。

 

 

運動学習においても「楽」に動いていれば、それだけ長時間・高頻度での動作が可能になるため、運動学習的にも良い効果があると思います。

 

もし参考になった方がいれば、明日からの臨床に是非生かしてみてください。

 

まとめ

  • 相手に触れるときは、距離感を意識して相手側に声かけを行ってから行う
  • 触れる速度は5cm/秒程度で触れる
  • 触れる場所は各分節の質量中心を触る
  • 動かし方は凹凸の法則・井桁崩しの原理を意識する
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