徒手療法で必要な思いやり

徒手療法

今回は徒手療法を行う上で絶対必要だと思っている思いやりの話です

 

 

テクニックだけでは患者さんは良くならない

テクニックがあれば〜、治療技術があれば〜、

みたいに技術があれば患者さんは良くなると思っていませんか?

 

 

僕も最初はこれに近いことを考えていた時期がありました。

 

「この関節の動きがずれてるから、この骨とこの骨を調整して〜」

「この筋とこの筋をこうやってリリースして〜」

 

みたいな感じでね、

 

 

ちょっとお恥ずかしい話なんですけどねw

 

 

確かにこれでも良くなる人は良くなります。

 

「あぁ痛くないですね」

「さっきより歩きやすいです」

 

そう言ってくれる方もいるのも事実です。

 

 

でもね、、、

それだけだと肝心な事が抜けてしまいます。

 

それは

相手を思いやる心です

 

相手に対する思いやりとは〜ある施術場面の一例〜

 

例えばですけど、

股関節に対してのモビライゼーションなど行う際に、患者さんを臥位にして行ったりするじゃないですか?

でも臥位になったその人は枕の高さが全然あっていなかったとします。

 

そんな状態でいくら股関節に対するとてもよく効く手技をやったとしても、効果十分でると思いますか?

 

 

多分でないんじゃないかなー?

 

 

そんな場合はまず手技云々よりも、その人がリラックスして臥位になれる状態を作れるかどうかだと思うんですよね。

 

 

相手がこちらを信頼して受けてくれるからこそ、こちらが行ったアプローチに対しての反応が相手に返ってくるんだと思います。

 

 

僕は今まで色々セミナーにも行きましたし、書籍などで勉強もしていますが、しっかりと効果が出ているセラピストは、ほぼ確実に相手に思いやりを持って環境を調整しています。

 

 

それはベッド上のポジショニングの場合もありますし、触れる前の声かけだったり、話すときの間だったりと種類は様々ですが、

 

 

相手に対しての思いやりは確実にテクニックの効果に繋がっていると思います。

 

相手に対する思いやり〜自分の姿勢の一例〜

 

相手に対する配慮は患者さんに対してのポジショニングというだけではありません。

その例として以前に施術中の姿勢について書いてあった記事がありました

これです

患者さんを触る時、正座ですよ。まさか、あぐらかいてないですよね?
患者さんを触る時に正座が良いよ! とツイートしたら、反響たくさん。 正座、おススメです。

 

 

この記事では力が入れやすいとか、実際の施術のしやすさなどを主に紹介していました。

ちなみに僕も断然正座派ですw

 

 

この正座がいいのは単に力が入れやすいからという理由だけではなく、相手に対する配慮なども含んでいると僕は思っています。

 

 

人によるかとは思いますが、

あぐらかいた状態って結構見た目だらしなく映りますよ。

 

 

その状態を患者さんは見ているわけです。

流石に、

 

 

「こいつ何あぐらかいとんねん!けしからん!」

 

 

 

ってなる人はいないと思いますけど(笑

 

 

「なんか不真面目そう、、、」

「この人で大丈夫なんかな、、、?」

 

みたいに不安を抱かせてしまう可能性は十分あります。

 

 

これは自分が実際に不真面目か真面目かの話ではなくて、

相手がそう感じてしまうだけでこちらとしては損なわけです。

 

 

信頼関係は最初でかなりの割合が決まってしまいます。

ということは自分の姿勢一つで自分のアプローチの結果が変わってしまうこともあり得るということですね。

 

 

逆に言うと、施術者側のちょっとした「思いやり」があるだけでより効果的なアプローチも可能になるのではないかと言うのが僕の持論です。

 思いやりのある触れ方には心地よさを感じる

ちなみに思うやりのある触れ方には「心地よい」感覚やそれだけでストレスを軽減する働きがあることがわかっています。

その感覚は内受容と呼ばれる感覚です。

 

内受容とは以前までは内臓感覚を中心に扱われてきましたが、

最近はそれ以外にも筋肉の収縮血管の運動感覚など広範囲のものを含むことがわかっています。

主な内受容性感覚の感覚は、

  • 暖かさ、冷たさ
  • 筋活動
  • 疼痛、むずかゆさ、
  • 空腹感、口渇感
  • 空気飢餓感
  • 性的刺激
  • 心拍
  • 血管運動感覚
  • 膀胱膨満
  • 胃、直腸、食道の拡張
  • 官能的な感触

などがあります。

 

内受容性感覚は単に受容期から刺激を受け取るというような感覚としての側面だけでなく、

「感情的な側面」「動機付けの側面」を持ち、常に身体の恒常性維持に関係すると言われています。

 

それらは生理的身体健全性の維持のために不可欠な「行動の動機付け」と関係しています。

 

やや言葉が難しいですが、要は「気持ちいい」ことは受け入れようとするし、

「気持ちよくない」ことは避けるように身体の反応として起こるよっていうことだと思います。

 

つまり
「不快な」内受容性感覚が入力されると、情動・感情的に「不快」になります。
身体は恒常性を維持しようとするのでその「不快」な情動・感情をなくすために身体の行動が起こるということになります。

 

臨床での一例

普段何気なくプラットホーム上、ベッドサイドで患者さんの手や足を触っているときに自分の触る場所や触る力加減、速度、時間などが患者さんにとって「不快」と感じてしまえば、それを避ける為に防御性の収縮が入ったり、動きを制限するように抵抗したりします。

逆に私たちの触る場所や力加減が患者さんにとって「快」の感情、すなわち心地よい感じ、「楽」であれば、防御性の収縮はなくなり抵抗感も軽減します。さらにその心地よい感覚が運動することに結びつけば、運動にを継続していくことに対しての動機付けも行われるので、運動を維持して行きやすくなります。(痛みなく動くと疲れるけど気分がいい、スムーズに歩けると気持ちがいいなど)

 

 

「快」の感情は、学習においても報酬系を刺激するものであるため通常のものより効率も良いと考えられます。

では「快」の感覚とは一体なんなのでしょうか?

「快」の感覚について

「快」の感覚とは、内受容性の感覚では新たに加えられたものであると言われています。

ちなみに「快」の感覚が他の触覚などと異なることを記した実験では、有髄求心神経が欠如している患者の検査において皮膚をゆっくりさすると、その患者は触っている方向はわからなかったが、ぼんやりと曖昧な心地よい感覚が生じたとされています。

 

この時機能的磁気共鳴画像では島皮質の活性化が見られ、一次体性感覚皮質の活性化は見られなかったそうです

 

「快」感覚の感覚受容器

「快」の感覚受容器自由神経終末と言われ、神経の繊維の種類はC繊維に分類されます。

C繊維の特徴:閾値が低い、無髄

これらの終末が神経の内受容性経路と連絡することが結論付けられています。

 

刺激伝導系は以下のようになっていて、自由神経終末の刺激によって、第1層脊髄視床皮質路を介し、島皮質に向かいます

自由神経終末

脊髄第1層:視床への直接的な連絡がある

傍小脳脚核:扁桃体、視床下部との間に相互連絡を持つ

視床

島:島皮質前部で最高レベルの統合

 

島皮質前部は身体、特にその恒常性に関するすべての主観的感情情動面での経験と、周囲と自身への意識的な認識に統合することにおいて極めて重要なヒトの脳構造特有の構造であると言われています。

施術者側のちょっとした「思いやり」 〜前提条件を揃える〜

僕自身、徒手療法は好きですし、非常に有効なアプローチであると思っています。

 

 

ですが、

 

大事なことってその手技だけなんでしょうか?

 

 

僕は手技それ自体に特別な意味があるはあまり思っていません。

それよりも相手に対する「思いやり」が重要で、特に僕が今一番大切にしていることは、

前提条件を整えるということです。

 

 

それはどういうことかというと、

「相手が十分にリラックスした状態でいるかどうか」

です。

 

 

特に臥位や座位で行う場合は注意が必要です。

決して背もたれがあれば力が抜けているわけではないですし、ましてや寝てれば必ずリラックスしているわけではありません。

 

 

これは僕の考えですが、基本手技は受け手側がこちらの手技を受ける準備ができていることを前提に作られていると思います。

 

 

つまり、

受け手側がその手技を受ける準備ができていないのであればその前提条件が異なるので、テクニックで紹介されているような効果が出ないことがあるかもしれないということです。

 

 

いくら患者さんのためにと思っていたとしても、こちらが一方的に手技を行なってしまう状態は自己満足でしかありません。

 

 

患者さんのためにと思うからこそ、この前提条件を整える必要があります。

 

前提条件を整えるための配慮

「徒手療法における前提条件」=「受け手側がリラックスして準備ができている」

と仮定すると相手に対する配慮としては身体と接地面との関係を良好に保つことが重要であると思います。

 

 

僕たちの業界で使われている言葉としてはパーキングファンクションという言葉を使うときもあります。

 

パーキングファンクションとは

支持面に接した身体部分がそれぞれに筋活動で結合されずに独立した重心をもって支持面から支えられている状態をパーキングファンクションという

引用:http://www.fujita-hu.ac.jp/~rehabmed/rehaken/kikanshi-8/tomita8.html

 

まぁ要は床面に対して身体が安定して、力が抜けた状態でその姿勢を維持しているということです。

 

相手に配慮したポジショニングの一例

基本的には僕もこのパーキングファンクションの状態が作れるように意識しています。

 

 

この状態を作れるために必要な要素として、

 

 

相手が地面を知覚しているかどうかが重要になります。

 

 

僕たちは基本的に地面から反力を得てそれを感じることで、地面を知覚しています。

 

 

反力が返ってくるためには、当然ですがある程度の地面の硬さがないと反力が返ってきません。

 

 

例えば病棟など(特に急性期に多いと思いますが)でエアマットを利用している方の場合は反力が十分返ってこないので、地面を知覚しにくい状態にあると言えます。

 

 

そのため、臥位になっていても筋の緊張が抜けず、常時力みの入った姿勢になりやすい可能性があります。

 

 

そういった場合には、リハビリの時間だけプラットホームに移動して行なったり、タオルなど使用し、ベッドに接している背面などの材質を少し硬いものに変更したりして、なるべく近くしやすいようにしていく必要があります。

 

ただエアマットを利用している人は、多くは褥瘡の予防のため仕方なく使用している方が多いと思うので、リハビリ以外の時間も継続して使用する際は、医師などに相談してから決める方が良いと思われます。

 

他には中枢疾患の方で、感覚鈍麻がある場合などは反力が十分でもそれを近くすることが難しいので通常の環境ではパーキングファンクションを作ることが難しい可能性があります。

 

 

その場合は例えば、徒手でベッドの方向に向けて、力が抜けていないところを揺すったり接している部分をさすったりして、床からの反力以外の感覚を入力するようにしています。

 

 

他にはこれまたタオルを利用して、接している部分の材質を変えてみたりすることで、その人がよりリラックスできる状態を意識的に作っていくようにしています。

 

他者に「触れる」ということ自体が特殊なことであると言う自覚を持つ

前提条件を整えたら次は実際に患者さんや利用者さんに触れていくわけですが、

 

 

みなさんは「触れる」ということに関してどのようにお考えでしょうか?

 

 

僕ら理学療法士や作業療法士やその他のセラピストはリハビリのやその他の施術の際に、当たり前のように患者さんやクライアントさんに触れていると思います。

 

 

ですが、実際の病院やサロンなどの特殊な環境以外で考えた場合

 

 

赤の他人の身体に触れることってあると思いますか?

 

 

基本的にはないと思います。

(仲の良い間柄であれば身体に触れていくことはもちろんありだとは思いますがw)

 

 

僕らセラピストは徒手療法に限らず、ほぼ毎日誰かの身体に触れるというなかなかあり得ない環境にいるわけです。

 

 

そのような環境に慣れてしまっていると、

 

 

「相手に触れるのなんて当たり前じゃないか」

 

 

という感覚になってしまい、結果として相手への配慮というものが欠落しやすいのではと思います。

 

パーソナルスペースを意識してみよう

人にはパーソナルスペースと言われる「間合い」のようなものが存在します。

 

 

人は基本的にはこの「間合い」の中に入られると、自然と臨戦態勢に入ります。

 

 

このパーソナルスペースの範囲は相手との親密度によっても変化するので、セラピストと患者さんのラポール形成が徒手療法においても重要であると言えますね。

 

プライベートな部分は慎重な配慮が必要

人によって多少異なるとは思いますが、

 

 

触れることに比較的慣れている部分全然慣れていない部分というのが存在します。

 

 

例えば腕や肩などは普段から誰かと触れる機会の多い部分であるため、

 

 

触れられたりすることに対して抵抗感が少ないですが、

 

 

例えば足など普段から人に触れられることの少ない部分に関しては、

 

 

抵抗感を感じやすいと思います。

先ほどのパーソナルスペースの考えも考慮すると、男性のセラピストが女性の患者さんの足を触る時なんかは、一番相手に対しての配慮が必要な状態であると言えますね。

 

特に理学療法士の人は、他のセラピストよりも足や大腿部(太もも)に触れる機会が多いので、

 

男性理学療法士の方は要注意です!

 

 

この場合、たとえ介入すべき場所が大腿部であったとしても、

いきなり触れるようなことはせず、まずは肩周囲から始めるとか、

下肢の抹消部分から始めるなど触れる順番を変えていくことで対応していく必要があります

 

 

僕たちが普段から対応していく患者さんの場合は、ただでさえ怪我や病気で身体の一部分が使いにくくなってしまっている状態です。

 

 

その場合触れられることに対して「痛くされるんじゃないかな?」と、触れられることに対してネガティブなイメージや一層の緊張感を持っている場合も多いと思うので、触れる部分順番は慎重に選択していくべきかなと思います。

 

僕の体験ですが、片麻痺の人を担当していて麻痺している方の上下肢をすごく気にされている状態だったので、あえて非麻痺側の方からアプローチしていくことで緊張を軽減することができたということがあります。
ですが反対に違う人に同じことをしたら、「悪いのはこっちの方なんで、そっちはいいです」とご指摘を受けたこともありました(汗
こう言ったことは一概に一括りに言えない部分があるので、その日がどんな性格なのかを考慮しながら決めていけるといいですね。

質量中心を意識してリラックスできるような配慮をしよう

当ブログでも何度か出ている質量中心ですが、何度も出ているということは、それだけ重要であるとも言えます。

 

 

先ほどの前提条件を整えている状態であればパーキングファンクションが保たれているので、それぞれのセグメントという上腕や大腿部など身体を構成している各部位がそれぞれの固有の重心を持って存在していることになります。

 

 

そのため、動かす際にはそれぞれの重心を考慮して触れる場所を選ばないと、各セグメントが不安定な状態になり余計な緊張を作り出してしまいます。

 

 

重心というのはそれぞれの物体の質量の中心と同じ場所にあるので、この質量の中心を意識しながら触れる場所考えていけるとより良い反応が得られると思います。

 

触れる速度は用途に応じて使い分けよう

触れている場所を変える場合や、ストローク系の手技のような場合、触れる速度意識することで相手の反応が変わってくることがあります。

 

 

ある実験では、触れる速度を5cm /秒以下のゆっくりした速度で行うことで副交感神経が優位になると報告しています。

 

 

副交感神経とは自律神経の一つで、リラックスしたりすると優位になる神経です。

 

 

逆に速い速度で触れると交感神経が優位になると言われています。

 

 

ということは、

例えば日中の覚醒が悪い患者さんなどに対して覚醒をあげたり、次に行う運動療法に備えての準備を行いたいときは、速い速度で触れるようにすることで、通常の介入よりも良い反応が出やすいと思います。

 

 

逆に緊張が高く、なかなかリラックスした状態が作れない患者さんの場合は、ゆっくりとしたストロークをかけるように意識することで、通常よりもリラックス効果を上げることができると思います。

参考図書

 

最後に

思いやりという配慮が抜けてしまうと、効果が出なかったことをテクニックのせいにしたり、技術不足のせいにしたりしてしまいます。

 

そうなってしまうと患者さんのためにそのテクニックを使っているのか、それとも自分のために使っているのわからなくなってしまいます。

 

とどのつまり、

いかに相手のことを考えながらできるかだとは思います。

「今のこの姿勢はしんどくないかな?」

「いきなり動かされたら驚くだろうから、しっかり説明してからやらなきゃダメだな」

 

セラピストごとに得意な手技はあると思いますが、それはまず相手への思いやりあってこその手技であることを念頭に置いておきましょう。

 

 

テクニックも大事ですが、まずは相手に対しての配慮ありきで考えないとどんなテクニックも効果半減、下手したら患者さんに悪影響を招きかねませんからね。

 

 

まずは相手に対する配慮を持って臨床していきましょう。

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